「賞味期限が5年前の砂糖、これってまだ使えるの…?」
戸棚の奥から出てきた、白くてカチカチに固まった砂糖。開けてみても特にニオイも変じゃないし、見た目も問題なさそう。だけど、なんとなく心配になってしまいますよね。
でも実は、砂糖はとても保存性が高い調味料のひとつ。正しく保存されていれば、数年どころか半永久的に保存できることもあるんです。今回はその理由を、科学の視点からやさしく解説していきます。
微生物が腐らせる。でも砂糖は腐らない
食べものが「腐る」って、どういうことだと思いますか?
実は、目に見えない微生物(細菌やカビなど)が食べものの中で増殖することで、ニオイや見た目、味が変わり、体に悪影響を与える状態になることを言います。
じゃあ、どうして砂糖はその微生物たちにやられないのでしょう?
カギは「水分」だった!微生物が活動するには水が必要
ここで大事なポイントは、微生物は水がないと生きられないということ。
水分が豊富な食品ほど、腐りやすいんです。たとえば、生野菜や生魚はすぐに傷みますよね。これは水分がたっぷり含まれていて、微生物にとって住みやすい環境だからです。
その点、砂糖はどうかというと──水分がとても少なく、微生物がほとんど活動できない環境なんです。
「水分活性」が低いと腐りにくい
科学の世界では、食品に含まれる”自由に使える水分”のことを「水分活性(すいぶんかっせい)」と呼びます。英語では「aw値(エーダブリューち)」とも言います。
この水分活性が低いと、微生物は活動できません。砂糖の水分活性は0.6以下ととても低いため、ほとんどの微生物は増殖することができません。
ちなみに微生物の多くは、水分活性が0.9以上でないと元気に活動できません。だから、砂糖は腐りにくいのです。
逆に微生物の水分を奪うパワーまである
砂糖にはもうひとつすごい力があります。
それは、周りの水分をぎゅっと吸い取る性質です。たとえば、ジャムや甘く煮た果物が長持ちするのは、この砂糖のパワーを利用しているから。微生物がいても、砂糖に水分を奪われてしまって活動できなくなるんですね。
これはいわば、天然の保存料ともいえる働きです。
他の調味料はどうなの?しょうゆやみりんとの違い
「砂糖が長持ちするのはわかったけど、他の調味料は?」
ここで、いくつか代表的な調味料の保存性を見てみましょう。
腐りにくい(保存性が高い)調味料
- 砂糖:水分活性が低く、微生物が育たない
- 塩:塩分が強くて微生物が生きられない
- 酢:強い酸性で殺菌効果もある
- みそ(塩分が高いもの):発酵食品で塩分もある
傷みやすい(開封後に注意が必要)調味料
- しょうゆ:空気に触れると酸化しやすい
- みりん・料理酒:糖分とアルコールがあるけど、空気に触れると風味が落ちる
- マヨネーズ・ケチャップ:油分や水分が多く、カビやすい
保存のコツは、「酸化・湿気・直射日光を避ける」こと。これを守ることで、どの調味料も基本的に長く使えるようになります。
正しい保存で、もっと安心&ムダが減る
砂糖は水分が少なく水分活性が低いため保存性が高い調味料ですが、賞味期限の判断や使用については自己責任でお願いします。砂糖は腐りにくいのは事実ですが、保存環境によっては劣化することもあるため、「冷暗所で密閉保存」の基本は守ってくださいね。
また、見た目に変色があったり、ニオイが変わっていたり、カビが出ていたりしたら、迷わず使用をやめましょう。
もし湿気で固まってしまった場合は、軽く電子レンジにかけることで使いやすくなるのでカチカチで困っている方は一度お試しください。それではまた!