りんごのそばに置くと熟すってホント?
「アボカド、まだ硬いなあ…」そんなとき、母が「りんごと一緒に袋に入れておけば早く柔らかくなるよ」と教えてくれました。え?りんごにそんな力が?と半信半疑だったけれど、数日後にはアボカドがトロッと食べごろに。
実はこれ、科学的にちゃんと理由があるんです。カギを握っているのは、「エチレンガス」という植物が出す特別なガス。果物の”熟しスイッチ”のような役割をしています。
この記事では、エチレンガスの正体と働き、そして日々の果物保存に活かせるテクニックをわかりやすく紹介します。
エチレンガスとは?植物が出す「熟しスイッチ」
エチレンガスは、植物が自分で作って空気中に放つ「ガス」です。少し難しい言い方をすると、これは植物ホルモンの一種で、「実を熟させなさい」と命令するサインのようなもの。
たとえばバナナやキウイ、アボカドなどは、収穫された後も生きていて、このガスを受け取るとどんどん熟していきます。
そして、りんごはエチレンガスをたくさん出す果物の一つ。だから、他の果物と一緒にすると、そのエチレンの力で熟すスピードがアップするというわけです。
どんな変化が起きる?熟すってどういうこと?
果物が「熟す」とは、見た目や味、香りがどんどん変わっていくこと。
エチレンガスの働きによって、こんな変化が起きます:
- でんぷん → 糖に変わって甘くなる
- 果肉が柔らかくなる(細胞の壁がほぐれる)
- 香りが強くなる(香り成分がたくさん出てくる)
アボカドやキウイが最初は固くて味もあっさりしているのに、熟すとトロッとした食感と甘みが出るのは、まさにこの変化のおかげなんです。
熟す果物 vs 熟さない果物
ただし、すべての果物がエチレンに反応するわけではありません。「収穫後にも熟す果物(追熟タイプ)」と「収穫したら熟さない果物」に分かれます。以下代表的な熟す果物熟さない果物です。
熟す果物(追熟タイプ)
- バナナ
- キウイ
- アボカド
- 桃
- メロン
熟さない果物
- ぶどう
- いちご
- みかん
- さくらんぼ
- りんご※
※りんごは熟度は変化するが甘さはあまり増えない
この違いを知っておくと、「これは早く熟させよう」「これは新鮮なうちに食べよう」と判断できるのでとても便利です。
上手な使い方と注意点
早く熟させたいときは: 追熟タイプの果物(アボカドやキウイなど)をりんごと一緒に袋に入れて常温で置くと、エチレン効果で熟しやすくなります。
逆に熟すのを遅らせたいときは:
- エチレンを出す果物と一緒にしない
- 冷蔵庫で保存してエチレンの動きを緩める
注意したいこと: エチレンガスは野菜にも影響します。たとえば、ほうれん草やブロッコリーなどの葉物野菜は、エチレンのせいで黄色くなったり、萎れたりしやすくなります。
プロも活用する「エチレンの力」
実はこのエチレン、りんご農家や果物の流通業者でも使われています。収穫したりんごを少しずつ熟させたり、出荷タイミングに合わせて食べごろにしたりするために、エチレンの発生量を調整しているのです。
つまり、私たちの身近にある”熟し方”は、実はちゃんと科学でコントロールされているんですね。
まとめ:りんごは自然の”熟しスイッチ”
りんごが出す「エチレンガス」は、果物にとっての”熟しスイッチ”。アボカドやキウイなどの追熟タイプの果物を柔らかく甘くする力があります。
逆に、野菜を傷めてしまうこともあるので、保存の仕方や組み合わせにはちょっとした工夫が必要。
これからはスーパーで果物を選ぶとき、キッチンで保存するときに、「どれをどう組み合わせるか」を考えるのがちょっと楽しくなるかもしれませんね。