「煮物にじゃがいもを入れたら、気づいたらボロボロに…!」 こんな経験ありませんか?一方で、「この品種はいつまでも形が残るから便利!」という声も。実はこの違いのカギを握っているのが、じゃがいもに含まれる“でんぷん”の性質なんです。今日はじゃがいもの煮崩れとでんぷんの関係について紐解いていきましょう。それではどうぞ!
「煮崩れ」って何が起こっているの?
じゃがいもを加熱すると、中のでんぷんが水を吸って膨らみ、細胞同士のすき間がゆるみます。さらに、細胞をつなぐペクチン(野菜のつなぎ目になる成分)も温められて壊れると、全体が崩れやすくなるのです。
でも、じゃがいもの品種によって、このでんぷんの「種類と割合」がちがいます。それが煮崩れのしやすさに直結するんですね。
でんぷんには2つのタイプがある
じゃがいものでんぷんには、大きく分けて2つのタイプがあります。
まず「アミロース」は、糖がまっすぐにつながった形をしていて、加熱してもあまり膨らまず、きゅっと締まる性質があります。その結果、煮崩れしにくいじゃがいもになるんです。
一方の「アミロペクチン」は、糖が枝分かれ状につながった形で、水をたくさん吸ってモチモチに膨れる特徴があります。これが多いと、煮崩れしやすくなってしまいます。
多くのじゃがいもは、この2つのでんぷんが混ざっていて、そのバランスの違いでホクホク感や粘り感が決まっているんですね。
代表的な品種とその特徴
では、実際の品種でどんな違いがあるのでしょうか。
男爵(だんしゃく)は、アミロペクチンが多めで、ホクホクした食感が特徴です。ただし崩れやすいので、ポテトサラダやコロッケなど、むしろ崩れてほしい料理に向いています。
メークインは、アミロースが多めで、しっとりした食感ながら崩れにくいのが魅力。肉じゃがや煮物など、形を残したい料理には最適です。
キタアカリは男爵に似ていますが、甘みが強めなのが特徴。ホクホクした食感を活かして、じゃがバターや炒めものにぴったりです。
インカのめざめは、アミロペクチンが多めで、ねっとりとした甘い食感が楽しめます。ポタージュやグラタン、さらにはスイーツにも使える個性的な品種です。
たとえば「ポテトサラダを作りたい!」と思ったら、崩れやすい男爵がぴったり。一方、「形を残したい肉じゃが」には、メークインが安定感抜群です。
どうして加熱で崩れるの?もう少し詳しい仕組み
加熱によってじゃがいもが崩れる仕組みを、もう少し詳しく解説します。
まず火を通すと細胞を取り囲むタンパク質やペクチンが緩んで、じゃがいも同士が離れやすくなります。これが「細胞壁がゆるむ」状態です。
次に起こるのが「でんぷんの糊化(こか)」。水分を含んだでんぷんが膨らみ、ゼリー状になります。特にアミロペクチンが多い品種ほど、もっちりとした食感になると同時に崩れやすくなるんです。そして加熱と水分の吸収が進みすぎると、細胞がもろくなって形が壊れ、一気に崩れてしまいます。これが「煮崩れピーク」の状態です。
煮崩れを防ぐコツ
「でも、やっぱり煮崩れさせたくない!」という場合もありますよね。そんなときは、ちょっとしたコツで煮崩れを防ぐことができます。
水から煮る
実は水からゆっくり加熱することで、細胞が締まりやすくなり沸騰したお湯にじゃがいもをいれるより崩れにくくなります。
酢やみりんを少量入れて煮る
酢の酸やみりんのアルコールが細胞壁を強く保ち、荷崩れを防ぎます。
皮付きのまま煮る
これはイメージしやすいですね、皮がガード役となり、細胞壁の崩壊を防ぎます。
こういったコツを覚えておくとぐっと煮崩れによる失敗をふせぐことができます!
カレーに男爵を使うと翌日ドロドロになる?
ちょっと話題がそれますが、カレーを作って、一晩置くとトロトロになるのは、アミロペクチン多めの男爵を使ったときが顕著です。翌日のカレーは旨味が増すと言いますが、食感は完全にスープ状に…! もし「翌日もしっかり形を残したい」なら、メークインを試してみることをおすすめします。
また、フランス料理のポトフでは、しっとりしたメークイン系が重宝されます。崩れにくいことで、長時間煮込んでも美しい一皿に仕上げられるからです。
でんぷんを知って、もっとおいしいじゃがいも料理を
じゃがいもの煮崩れは「アミロース vs アミロペクチン」のバランスによるもの。ホクホク崩れやすい「男爵」と、しっとり崩れにくい「メークイン」の違いを理解して使い分けることで、料理の幅がぐんと広がります。
さらに、調理法(加熱の仕方や調味料のプラス)を工夫すれば、どんな品種でも形を守ることができます。
科学を味方にすれば、じゃがいも料理の失敗が減り、もっと自由にアレンジできるはず。次回の煮物やポタージュで、ぜひ品種と調理法を意識してみてくださいね。