焼きたての餃子にかぶりつく瞬間の「パリッ」。天ぷらを箸で割ったときの「サクッ」。ポテトチップスの「バリバリ」音。
聞いただけで、なんだかよだれが出てきませんか?
不思議なもので、こういう音がするだけで「あ、これ絶対美味しいやつだ」って確信してしまいます。逆に、音がしないと「なんか物足りないな…」と感じることも。これは単なる思い込みなのでしょうか?実は、ちゃんとした科学的な理由があるんです。今日は味覚と音の関係について紐解いていきましょう。それでは早速どうぞ!
味は舌だけじゃない?音も「味覚」の一部だった
私たち、普段「味は舌で感じるもの」って思ってますよね。でも脳科学の世界では、もっと複雑なことが起きています。私たちの脳は、実は五感すべてを使って「味」を作り上げているんです。
この現象、「クロスモーダル知覚」と呼ばれています。簡単に言うと、「音が味を変える」「色が風味を左右する」といった、感覚同士の不思議な連携プレーのことです。
面白い実験があります。ロンドン大学のチャールズ・スペンス教授が行ったものですが、被験者に同じポテトチップスを食べてもらいつつ、ヘッドホンで「パリパリ音」の大きさを調整しました。すると結果は
- 音が大きいほど「新鮮で美味しい」と評価
- 音が小さいと「しけってる」と感じる
もちろん食べているチップスは全く同じもの。音だけ変えただけで、脳は「別の味」として認識してしまったんです。
これは納得の結果で、自分も似たような経験があります。ヘッドホンつけて動画見ながら食事すると、なんか味が薄く感じたりしませんか?。咀嚼音が聞こえないと、「ちゃんと食べた感」がなく、全く聞こえないのはやっぱり違和感があるんですよね。
「パリパリ音=美味しい」は本能的な判断
考えてみると、私たちは「音」で食べ物の状態を判断していることが分かります。天ぷらの「サクッ」は揚げたての証拠。逆にしんなりして音がしなかったら「時間経ってるな…」とガッカリする。
つまり、音は鮮度や食感を教えてくれるサインということなんです。脳は過去の経験から「この音=美味しい」というパターンを学習済み。だから期待していた音が聞こえると「よし、理想通り!」と満足し、音がないと「期待はずれ…」と味まで物足りなく感じてしまう。料理の美味しさは、味だけではなく「音の演出」でも作られてたんですね。
ちなみに、テレビCMでポテチの咀嚼音がやたら大きく聞こえるのも、これを狙った戦略。実際よりもかなり音を強調して、食欲を刺激してるんです。さすが企業、よく分かってる…。
家庭でも「音の美味しさ」を演出できる
「音が大事なのは分かった。でも、どうすればいいの?」そう思ったあなたに、家庭でできる”パリパリ音の作り方”をお教えします。
餃子をパリッと焼くコツ
- フライパンにやや多めの油をひく(音が出やすくなります)
- 餃子の底面を軽く湿らせてから焼くと、しっかり焼き目がつく
- 蒸し焼き後、フタを取って水分をしっかり飛ばす
この「水分が蒸発する音」と「表面が固くなる音」の組み合わせが、あの心地よい「カリッ」を生むことができます。
天ぷらをサクッと仕上げるコツ
- 衣は冷水でサッと混ぜる(粘りが出ると音が鈍くなります)
- 小麦粉に片栗粉を少し加えると軽やかな食感に
- 油の温度を保つため少量ずつ揚げる
- 何より揚げたてを食べる!(時間が経つと湿気で音が消えます)
天ぷらって、味よりも「音」で鮮度を判断する料理の代表格ですね。世界的シェフのヘストン・ブルメンタール氏は、実際に「音」を料理に取り入れています。「Sound of the Sea」という料理では、海の幸を食べながら貝殻型のイヤホンから波の音を流すという演出も。まさに五感で味わう料理です。
今日から、耳でも味わってみませんか?
普段何気なく感じている「パリパリ=美味しい」という感覚。これは単なる思い込みではなく、脳が五感を総動員して作り上げた、れっきとした「味覚体験」だったんです。
明日から、ごはんを作る時・食べる時、ちょっとだけ「音」に耳を傾けてみてください。きっと、いつものご飯と違う発見があるかもしれません。料理って楽しいですね!それではまた!