その”ゴシゴシ研ぎ”、逆効果かも?
毎日のように炊く「白ごはん」。炊飯前の”お米研ぎ”は、皆さん欠かさずやっている作業ですよね。
でも最近、「昔よりご飯がパサつく気がする」 「炊きたてなのに、なんだかツヤがない…」こんな疑問を感じたことはありませんか?この違和感の原因、実は「研ぎすぎ」にあるかもしれません。
現代の米は精米された時点で、すでにぬか層はかなり取り除かれています。ところが、”ぬか臭”を落としたい一心でゴシゴシと力任せに研いでしまうと、肝心の「美味しさのもと」まで洗い流してしまう可能性があるのです。
この記事では、「お米の粘りとツヤを生み出す”でんぷんの構造”」に注目して、なぜ研ぎすぎると炊き上がりに差が出るのか、科学的に解き明かしていきます。
科学の視点:お米表面の”でんぷん粒子”が味を決める
白米の主成分は、ご存じの通り「でんぷん」です。研ぎ方が味に影響を与える最大の理由は、お米の表面に付着している”遊離でんぷん(ゆうりでんぷん)”にあります。
遊離でんぷんとは?
遊離でんぷんは、精米時の摩擦で米粒から削れ落ちた、非常に細かいでんぷん粒子です。これが米の表面にうっすらと付着しており、水に溶けると白く濁ります。そのため「汚れ」や「ぬか」と誤解されがちですが、実は炊き上がりに粘りとツヤを出す大切な成分なのです。
でんぷんの”糊化”と粘り
炊飯時、お米は水と熱によって「糊化(こか)」と呼ばれる変化を起こします。でんぷんが水分を吸って膨らみ、半透明の粘りのある状態になることで、ふっくらとした食感と光沢が生まれるのです。
このとき、表面の遊離でんぷんが多いほど、水を抱え込みやすく、糊化がよりスムーズに進むため、よりしっとりとつやつやのご飯に仕上がります。
しかし、過剰に研いでこのでんぷん粒子を落としすぎると…
- 水を吸う力が弱まる
- 糊化が不十分になる
- 粘りが出にくくなる
という良くない状況が起きてしまい、結果として”ツヤなし・パサつき気味”の炊きあがりになってしまいます。
実際に比較!研ぎ回数でここまで変わる
では、実際にどの程度の研ぎ加減が”ちょうどいい”のでしょうか?研ぎ回数を変えて炊き比べた結果を表にまとめてみました。
研ぎ回数 | 水の透明度 | ツヤ感 | 粘り | 食感の印象 |
---|---|---|---|---|
0回(すすぎのみ) | 白く濁る | ややツヤあり | 強い粘り | 少し重たい |
2,3回 | 半透明 | ツヤしっかり | 適度な粘り | ふっくらもちもち |
5回以上 | 透明に近い | ツヤ減少 | 粘り少い | シャキッとしてややパサつく |
このように、「透明になるまで研ぐ」=「キレイ」という考えは誤りで、むしろ美味しさの一部を削ぎ落としてしまう行為になっている可能性が高いのです。
美味しく炊くための”正しい米研ぎ”ステップ
ポイントは「軽く、すばやく、回数を決めて」。以下のステップを参考に米とぎをしてみてださい。
【1】最初のすすぎ
素早く水を入れて、手早くかき混ぜてすぐ捨てます。ここでは、空気・埃・酸化臭を落とすのが目的です。
【2】本洗い(2,3回程度)
水を少なめに入れて、指先で「シャッシャッ」と軽く回します。ゴシゴシこすらず、2,3回ほどを目安にしましょう。
【3】水切りと浸水
研ぎ終わったらザルで水をしっかり切り、季節に応じて適切に浸水させます(夏:30分/冬:1時間)。これで糊化の準備が整います。
「美味しさは、こすり落とすものじゃない」
お米をおいしく食べたい気持ちがあるからこそ、「白く濁らないまで洗う=正解」と思い込んでしまいがちですが、実際にはお米の表面にある”遊離でんぷん”は、粘りとツヤの源。洗い流しすぎることで、その旨みまで削ぎ落としてしまうのです。洗い過ぎには注意ですね!
これからは、「本洗い2回・やさしく撹拌・浸水しっかり」を合言葉に、”ふっくらつやつや”なご飯を、もっと簡単に炊けるようになるはずです!ぜひ明日の炊飯から試してみてください!