コーヒーはお湯の温度で味が変わるって知ってましたか?
朝の始まりに、コーヒーの香りでほっと一息。お気に入りの豆を使って、丁寧にハンドドリップ。そんな習慣を大切にしている人も多いはずです。私もコーヒーが大好きで朝の一杯は格別なものです。
でも、同じ豆・同じ量・同じ淹れ方なのに、「あれ、今日はちょっと苦い」「なんか薄いかも」と感じたことはありませんか?
実はそれ、お湯の温度のせいかもしれません。
コーヒーの味は、お湯の温度によって驚くほど変化します。酸味が際立ったり、苦味が強くなったり、香りが飛んでしまったり…。この“温度の違いによる味の変化”は、単なる感覚ではなく、科学的な根拠がある現象なんです。
この記事では、
- なぜ90℃前後が「美味しいコーヒーの鍵」と言われているのか
- 温度によってどんな成分が引き出されるのか
- 自宅でも再現できる“ちょうどいい温度”のつくり方
をわかりやすく解説していきます。読み終わるころには、きっとあなたも自分好みのベスト温度でコーヒーを淹れたくなるなること間違いなし!!さあ、早速いってみましょー!
コーヒー豆の中にある“味のもと”
コーヒー豆って、あんなに小さいのに、どうしてあんなに奥深い味わいを持っているのでしょうか?その秘密は、豆の中にぎゅっと詰まったさまざまな成分たちにあります。コーヒーの味や香りを作っているのは、主に以下のような物質です。
主な味と香りの成分
成分の種類 | 主な物質 | 味の特徴 |
---|---|---|
酸味 | クロロゲン酸、クエン酸、リンゴ酸など | フルーティ・爽やか |
苦味 | カフェイン、フェニルインダン類など | シャープ・深み |
甘み・旨味 | アミノ酸、糖類 | 柔らかくてまろやか |
香り | 揮発性化合物(フラノン、ピラジンなど) | ナッツ感・チョコ感・フローラルなど |
焙煎されたコーヒー豆には、800種類以上の香り成分があると言われています。そして、これらの成分は「お湯の温度」によってどれがどれだけ抽出されるかが変わってくるんです。
たとえば、クロロゲン酸などの“酸味成分”は比較的低温でも溶け出しやすいのに対し、カフェインや苦味の元になる物質は高温でより多く抽出される傾向があります。
つまり、温度が高すぎると苦味ばかりが強調されてしまったり、逆に温度が低すぎると味が薄く、香りが立たない一杯になることも。この“成分の抽出バランス”こそが、90℃前後が推奨される理由のカギとなっているのです。
次に、具体的に「温度によってどんな味になるのか?」を、実験やデータをもとに見ていきましょう!
抽出温度によって何が変わる?
では実際に、お湯の温度が変わると、コーヒーの味にはどんな違いが出るのでしょうか?ここでは、抽出温度を大きく3つのゾーンに分けて、それぞれの味の傾向を見ていきます。
温度ごとの味わいチャート
温度帯 | 味の傾向 | 抽出されやすい成分 | こんな人におすすめ |
---|---|---|---|
80〜85℃ | 軽やかで酸味が際立つ | クロロゲン酸、クエン酸など(酸味成分) | フルーティな浅煎りが好きな人 |
90〜95℃ | 酸味と苦味のバランスが良い | 甘み・苦味・酸味すべてが適度に抽出 | 味の調和・飲みやすさを求める人 |
96℃以上 | 苦味が強く、渋みも出やすい | カフェイン、タンニンなど(苦味・雑味) | 濃い目・深煎り好きな人向け(ただし要注意) |
たとえば、浅煎りのエチオピア産コーヒーを80℃くらいで淹れると、明るい酸味が前に出て紅茶のような軽さを感じられることがあります。一方で、96℃以上の熱湯で淹れてしまうと、豆の繊細な香りが飛んでしまい、代わりに苦味や渋みが強く出てしまうことも。
特に家庭でよくありがちなのが、「お湯が熱すぎるままドリップして、結果的にえぐみや苦味が強くなってしまう」というパターン。これではせっかくのコーヒー豆の魅力がもったいないですよね。
バランス派には“90〜95℃”がちょうどいい
この90~95℃という温度帯では、
- 酸味がまろやかに残りつつ
- 甘みや香りも十分に引き出され
- 苦味や雑味はまだ控えめ
というバランスのとれた味わいになります。プロのバリスタや、国際的な抽出ガイドラインでも、この温度帯が「黄金ゾーン」として推奨されているのには、しっかりした理由があります。
世界のプロが使う「SCAの抽出ガイドライン」
コーヒー業界の国際的な基準を定めている団体「SCA(スペシャルティ・コーヒー協会)」では、ハンドドリップやペーパーフィルター抽出時のお湯の適正温度を【92℃〜96℃】と定めています。この温度帯は、以下のようなバランスを取ることができます:
- 酸味が立ちすぎず、苦味も出すぎない
- 豆本来の甘みや風味(香り)がしっかり抽出される
- 香気成分が揮発しすぎず、アロマがしっかり残る
つまり、90℃前後というのは、科学的に“味と香りのゴールデンゾーン”なんですね。
温度が高すぎると、何が起きる?
一方で、沸騰したばかりの100℃近いお湯をそのまま使うと、
- 苦味成分(カフェイン・フェノール類)が過剰に抽出される
- 渋みやえぐみが出やすくなる
- 香りの元になる揮発性化合物が飛んでしまう
といったデメリットが出てきます。とくに繊細な風味を持つ浅煎り豆やスペシャルティコーヒーでは、こうした“熱の強さ”が味に大きく影響するため、プロの現場でも温度管理は徹底されているのです。
家庭でどうすれば90℃を作れる?
「90℃前後がベストなのはわかったけど、家でそんなに細かく温度管理できないよ…」そう思った方も大丈夫。実は温度計がなくても簡単に90℃前後をつくる方法があります。
沸騰したお湯を○秒置くだけで簡単90℃のお湯
沸騰したお湯(100℃)をポットやドリップケトルに移し、30秒〜60秒置く。これが家庭で最も手軽な90℃のお湯の作り方です。
これは物理的な冷却の原理を利用した方法で、室温やお湯の量にもよりますが、一般的なキッチン環境ではこの方法で約93〜90℃前後まで自然に下がります。目安としては:
- 30秒 → 約95℃
- 45秒 → 約92〜93℃
- 60秒 → 約90℃
といった感じです。
一杯のコーヒーを“ちょっとだけ科学する”楽しさ”
最後に今日のまとめとして、お湯の温度とコーヒーの味わいの表をおいておきます。
温度 | 味の傾向 | 向いている豆やスタイル |
---|---|---|
80〜85℃ | 酸味が軽やかに引き立つ | 浅煎り、フルーティ系 |
90〜95℃ | 酸味・苦みのバランスが良い | 中煎り・万能タイプ |
96℃以上 | 苦味が強くなる | 深煎り・濃い目好き向け |
たった数℃の違いで、コーヒーの味は驚くほど変わります。それを知っているだけで、毎日の一杯がもっと楽しく、もっとおいしく感じられるはず。
ぜひ、明日の朝はちょっとだけお湯の温度にこだわって、自分だけの「おいしい温度帯」を探してみてはいかがでしょうか?それでは皆様良いコーヒーライフを!
参考文献
- Specialty Coffee Association (SCA) 温度ガイドライン
https://sca.coffee/research/coffee-standards - 日本コーヒー文化協会「コーヒーの味は温度で変わる!淹れるのに適した温度や飲み頃を紹介」
https://www.ejcra.org/column/ca_122/